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親の介護が必要になると、どうしてもサービスの利用や物品の購入などでお金がかかるようになります。
親が自身で賄えれば問題はありませんが、そうでなければ子どもが負担しなければなりません。そのような事態を避けるには、どのような解決策があるのでしょうか。
親の介護はどれくらいかかる?
まずは親の介護にどれくらいかかるのか見てみましょう。
親の介護にかかる費用
介護が必要な度合いは、その人の状態によって変わり、レベルを7段階に分けています。
要支援1~2と、要介護1~5です。要支援より要介護、数字は大きいほうがより多くの介護が必要となります。
家族だけで介護するのも不可能ではありませんが、介護のレベルによっては、ほぼ付きっ切りになり、外出もままならないため、あまり現実的ではありません。
そのため、費用をかけて介護サービスを受けます。
自宅で受けられるものは、訪問介護やデイサービスなどの通所介護などです。
施設に入所するものでは、老人ホームやケアハウス、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅などがあります。
かかる費用の内訳は、ホームヘルパーの利用や入浴介護、看護、リハビリ、療養指導、通所や通院、福祉器具の貸与や購入、自宅の改修、施設の入居金や利用料などです。
これらのうち、介護保険給付の対象になるものについては、一定金額まで自己負担額が1~3割になります。
1~3割負担になる一定金額は介護のレベルによって異なり、最も軽い要支援1であれば月50,320円、最も重い要介護5では月362,170円です。自己負担する割合は本人の年収や世帯年収に応じて決まります。
一定金額を超えると、その分は全額10割負担となります。
さらに「高額介護サービス費制度」があり、自己負担として支払った金額が一定金額を超えると還付されます(福祉器具の購入や自宅の改修費は対象外)。
自己負担の上限は生活保護を受けていたり、住民税が非課税だったりすると低くなり、最大では1世帯につき約月14万円です(課税所得690万円以上の場合)。収入が少ない世帯では1年の上限も設けられています。
これに介護保険給付の対象とならない分を加えたのが、実際に毎月の介護にかかる費用です。
生命保険センターの「生命保険に関する全国実態調査」2021年度版によると、毎月の介護にかかる費用の平均は83,000円でした。
出典:(公財)生命保険文化センター「令和3年度 生命保険に関する全国実態調査」より
https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html
もちろん、これは平均であり、15万円以上かかっている世帯も20.2%と少なくありません。在宅で介護するよりも施設に入所するほうが費用はかかる傾向にあります。
介護費用は親のお金から出すのが基本
毎月15万円以上の出費があると年間では180万円以上となり、子どもが賄うのは難しい場合もあるかもしれません。
なぜなら子どもにも生活があり、まして住宅ローンや教育費もあると、ますます余裕がなくなるからです。
さらに自分たちの老後資金も貯めなければいけません。無理をすれば自身の生活が困窮してしまう恐れがあるため、基本的に介護費用は親のお金から支払うように割り切りましょう。
親の介護でお金が足りなくなった時の解決策
ただし、年金だけでは賄える金額には限度があります。
本来であれば退職金や貯金を取り崩して不足分を賄いますが、まったく無かったり使い果たしてしまったりしたら、どうすればいいのでしょうか。
高額介護サービス費を利用する
先ほど触れた高額介護サービス費制度は、必要な手続きを経て、初めて還付されます。
申請方法は自治体によって異なりますが、自己負担が上限を超えるたびに領収書を添えて申請書を提出するのが基本です。
また、施設に入所している場合は、「負担限度額認定書」を発行してもらい、それを施設に提示すると、手続きをしなくても自己負担の上限を超えた分は請求されなくなります。
申請の期限は、請求が発生してから2年以内です。忘れずに申請しましょう。
自治体の融資制度を利用する
全国社会福祉協議会では、低所得者や障がい者、高齢者を対象に生活福祉資金の貸付を行っています。いくつか種類がありますが、福祉費なら借りることができるのは最大で580万円です。これを20年以内に返済します。
借りるときは連帯保証人が必要で、その場合は無利子です。
連帯保証人が用意できないと年1.5%の利子がかかりますが、銀行の融資や貸金業者から借りるよりもずっと低いので、どうしても不足するときは利用を検討したいところです。
リバースモーゲージをする
リバースモーゲージは、自宅を担保にしてお金を借りられるサービスで、本人が亡くなった後に自宅を売却して借金を清算します。使い道は制限されますが、介護費用として使うのは可能です。
親の持ち家があるならリバースモーゲージで介護費用を確保できます。
ただし、リバースモーゲージで借りられるのは、自宅の担保評価額の5~6割程度で、上限に達すると、それ以上は借りられません。また、担保評価額の変動で早々に借りられなくなったり、金利の上昇で利息分の返済を要求されたりするリスクがある点には要注意です。
生活保護を申請する
最後の手段として、生活保護があります。
申請できるのはやむを得ない事情で働けず、資産を所持しておらず、生活の援助をしてくれる親類がいない場合です。年金を受給していても、最低生活費を下回るようであれば生活保護を受けられる可能性があります。
ただし、利用できる介護サービスは、生活保護指定を受けた事業所のみです。
自分たちの老後の生活費も確保しよう
親の介護にかかるお金も心配ですが、子世代もいずれは老後を迎えて介護を受けるかもしれません。
その時になって困らないように、今から準備が必要です。
ねんきん定期便で自分がどれくらい年金をもらえるか確認し、不足する分を貯金しましょう。
体が動くうちは、定年退職後も働くようにすれば収入を得られて老後資金の足しになります。
また、持ち家があるならハウスドゥの「ハウス・リースバック」で現金化しつつ、そのまま住み続けることができます。
単なる売却と違って、ハウスドゥと賃貸借契約を結ぶので、現金化した後も住み続けることができるのがメリットです。家賃は発生しますが、以後の固定資産税や修繕費は不要になります。
老後の資金に不安があるときは、ぜひ相談してみてください(※物件により利用できないケースがあります)。
まとめ
介護にかかる費用は、介護保険給付の対象であれば、一定金額まで自己負担が1~3割になります。
さらに高額介護利用サービス制度を利用すると、自己負担の上限を超えた分が還付されるので、忘れずに手続きしましょう。それでも不足する場合は、生活福祉資金の貸付やハウス・リースバックなどを利用する方法があります。
ローンがまだ残っている場合、毎月の家賃がローンの返済額より高くなる可能性や、売却額をローン残高が上回る場合はリースバックが利用できない可能性もあります。
ただ逆に家賃が安くなる場合もあるので、不動産会社に確認して家賃とローンでどれだけの違いがあるのかを確認しましょう。