この記事を読むのに必要な時間は約 10 分です。
近年は単なる寿命よりも健康寿命が注目されるなど、高齢者の健康に対する関心が高まっています。
一方で気になるのが、医療費問題です。自分は大丈夫だと思っていても、些細なことがきっかけで医療費がかかる可能性は否定できません。
ここでは、老後にかかる医療費の目安や、支払う金額を抑えるコツ、資金調達の方法についてご紹介します。
老後にかかる医療費はどれくらい?
令和5年に厚生労働省が発表した資料によると、日本人が生涯必要とする医療費は、総計2,695万円にもおよびます。男女別で見ても、男性で2,614万円、女性で2,781万円と2,000万円をこえています。
70代以上からとくに医療費が高くなっており、最も高額となっているのは80~84歳あたりです。
また、令和3年に発表された資料では、国民ひとりあたりの医療費は、大まかに年齢別で見てみると、以下の表のとおりでした。
出展:医療保険に関する基礎資料~令和3年度の医療費等の状況~
65歳以上の高齢者の医療費が膨大となっている点は前年度と変わりありません。健康保険を適用すれば自己負担が1~3割程度になりますが、年金が主な収入源となる世代には、それでも痛い出費となるでしょう。
老後の医療費は自己負担額を軽くできる!
認知症や脳梗塞など、高齢者ほどリスクの高い病気は多くあげられます。今は元気でも、いつ定期的な通院が必要な状態になるかは分かりません。
そのため、老後の資金計画は医療費負担も考慮する必要があります。現在の資産を活用して、より多くのお金を用意しておくことはもちろん、出費額を抑える知識も持っておくと便利です。この項目では、医療費の負担を軽くするためのコツをご紹介します。
高額療養費制度を活用する
高齢になると医療機関にかかる可能性が高くなりますが、窓口負担の割合が減少する配慮がなされています。
70歳代前半で2割へ、75歳以降は所得に応じて1割負担となる方も多いです。(現役並みの所得があると見なされた方は3割負担となります)
また、高額療養費制度があるため、医療費が膨らんでも急激に支払額が増えることにはなりません。高額療養費制度は、一定金額以上を超えると、上限を超えた分のお金が国から還付される仕組みです。
所得に応じて高齢者以外も利用できる制度ですが、高齢者の場合、医療費の上限が低くなるため還付金を受け取れる可能性が高くなります。
たとえば、70歳以上の高齢者が高額な医療費を支払うこととなったとき、以下のように所得に応じて自己負担額の上限が決められています。
- 住民税非課税の低所得者…3万5,400円
- 年収156万円~約370万円…5万7,600円
- 年収約370~約770万円…8万100円+(総医療費-26万7,000円)×1%
- 年収約770~約1,160万円…16万7,400円+(総医療費-55万8,000円)×1%
- 年収約1,160万円以上…25万2,600円+(総医療費-84万2,000円)×1%
高額療養費制度については、入院や手術など医療費が高額になりそうな際、医療機関から説明がありますが、自分自身でもこのような制度があることを知っておくと安心です。医療機関からの説明がない場合は、高額療養費制度の利用が可能かどうかを確認してみましょう。
医療保険に入る
国民健康保険や会社で加入する被用者保険の他に、民間の医療保険を利用する手もおすすめです。
特定の疾病に対する保証が手厚いものや、毎月の掛け金が少なく、サポートがシンプルなものなど、近年の医療保険は多種多様です。中には、ライフスタイルに合わせて欲しい保証を組み合わせて作るオーダーメイドの医療保険も存在します。
このような民間の医療保険に加入するメリットは、入院・手術時の負担をカバーできること。貯蓄があまりない方や自営業の方は、民間の医療保険なら入院で無収入となる期間をカバーしてくれるプランがあり、退院後の生活に不安を抱かずに済みます。
会社員の方にも、民間の医療保険へ加入しておくメリットはあります。たとえば特定の先進医療や自由診療を受ける際は、会社で加入している健康保険が利用できません。
通常であれば全額自己負担となってしまい、かなりの出費となってしまいます。しかし、先進医療や自由診療に適用できるプランもある民間の医療保険であれば、加入内容に応じて自己負担額の一部を保証してもらうことが可能です。
民間の保険というと生命保険のイメージが強い方もいるかもしれません。高齢者と呼ばれる年齢が近づいてきたら、生命保険よりもむしろ、健康寿命を延ばす医療保険への加入を意識すべきです。
医療費の支払いが困難になったときの対処法
年金受給額が少ない、貯蓄が心許ないなどの理由で、高額療養費制度を活用しても医療費の支払いが困難になるケースはあります。
高齢者が新しく働くとなっても採用が難しかったり、給料が少なかったり、あるいは通院との兼ね合いで働くこと自体が困難な場合も多いでしょう。
このような事態を想定して、早いうちに老後の医療費に備えることが重要です。この項目では、医療費の支払いが困難になった場合の対処法や、事前にできる対策をご紹介します。
支払い方法を相談する
医師法により、医療機関は患者がどのような事情を抱えていても、求められれば治療を断ることはありません。しかし、医療費の支払いが困難な患者の場合、早期退院を求められたり、転院を求められたりとトラブルにつながりがちです。
そのような事態にあわず、必要な治療を安心して受けられるよう、医療費の支払いが困難だと分かった時点で早めにできる対策をとりましょう。
たとえば、限度額適用認定証を利用する手があります。限度額適用認定証をあらかじめ申請しておくと、自己負担できる医療費の限度額を超えた分は請求されません。
1か月の医療費が限度額以内となれば全額支払うことになりますが、限度額適用認定証を申請することで最高でいくら支払う可能性があるのかを把握しておけます。
一時的に支払うお金を自治体が立て替えてくれる、高額療養費受領委任払い制度もおすすめです。普段から健康保険などの滞納がない方のみが利用できる制度ですが、一時金さえ立て替えてもらえれば問題ない、という方は、一度相談してみてはいかがでしょうか。
制度を利用できそうにない方は、医療機関に直接相談する手もあります。高額医療の場合、支払いを分割してもらえるケースもあるため、各医療機関で担当者に問い合わせてみましょう。
医療費のための資金を確保する
加入している保険によっては、高額療養費貸付制度などが利用できます。還付金で戻ってくる医療費の9割程度を先に得られる制度で、先に支払うお金を用意できない(還付金では遅すぎる)方に最適です。
金利のデメリットがありますが、即日で現金を得られる金融機関からの借り入れを検討するのも良いでしょう。
各自治体の中小企業従業員生活資金融資も、条件さえ満たせば利用できます。保証機関による保証や一定額以上の年収など、条件が複数存在する点には注意が必要です。
不動産を所有している方は、それらを活用する方法が最も手軽です。自宅を売却して現金化すれば、まとまった大金を得られるため、医療費以外に退院後の生活費なども確保できます。
また、たとえばリースバックを利用すると、自宅を売却しても家賃を支払うことで住み続けることが可能です。売却するため固定資産税の支払い義務から解放されるなど、現金が即座に用意できる以外のメリットも多くあげられます。
利用する際は、ハウスドゥのハウス・リースバックに一度ご相談ください・
物件の適切な査定方法を知っており、さらにリース期間や物件の買い戻しなど融通がききやすいため、個人の事情に合わせたリースバックの利用ができます。
まとめ
老後の資金計画で重視すべきものは、家賃や生活費などの日常的にかかる費用だけではありません。一度に多額の金額がかかる可能性の高い、医療費もあげられます。
医療機関にかかっても1割負担だから大丈夫、と思っていると、思わぬ入院・手術で多額の費用が請求される事態になりかねません。
計画的な資金作りや、各種制度を利用した、医療費を抑える工夫を知っておきましょう。